何の保険に入ればいいの?

「責任」を全うするために必要な、該当する賠償責任保険にかならず加入するようにしてください。その後にさらに余裕のある場合は、傷害保険等の付加的な保険に加入すればよいと思います。

ここで注意していただきたいのは、「組合総合特別補償制度(特別補償)」は傷害保険とは違うということです。これは賠償責任が確定するしないにかかわらず、特別補償規定に従って「特別補償金」を支払う制度です。いわゆる「傷害保険金」を支払うものではありません。これは、「組合賠責」に加入するための前提条件となっています。
これについては、あとで詳しく説明しますが、まずここでは必要な賠償責任保険についてチェックをしてみましょう。

一般的にダイビング事業者が関係すると思われる賠償責任保険には、以下のようなものがあります。そして、該当すると考えられるものには、すべて、もれなく加入する必要があります。これは強い推奨ではなく、絶対加入してくださいということです。
該当する保険には、任意ではなく、必ず加入する必要があります。

 

●ダイビング事業活動(講習・ガイド)に関する賠償責任保険

一般にはインストラクター賠償責任保険といったものが、これに相当すると考えられています。組合では「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」の一部として含まれます。
これは基本中の基本ですから、これに加入することなくダイビング事業を行なう人は少ないと思います。しかし、インストラクター賠償責任保険の共同被保険者としてだけでOKと思っている事業者は少なくないと思います。組合では、事業者が正面から対応できる事業者中心の賠償責任保険の重要性を当初から説明してきました。しかし、とりあえずは大きな問題がなく機能していますのでインストラクター保険でもよいと考えることにしましょう。

●その他の関連事業活動に関する賠償責任保険

ダイビング事業者の行なう「ダイビング以外の関連事業」に対応する賠償責任保険のことです。具体的には、ダイビング以外のマリンスポーツ、バーベキュー等のリクレーション活動、ドルフィンスイミング、シーカヤック等の指導・ガイド、といったものに関する賠償責任保険が、そういった活動を行なっているならば必要だということです。これらは、一般的なインストラクター保険では、カバーすることができない可能性があります。バーベキューの管理は、一般的には、ダイビングインストラクターの業務と見なされないのではないでしょうか。
組合では「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」の一部として含まれます。これは、組合では組合員である事業者の派生的な事業活動全般を賠償責任保険の補償範囲に含んでいるからです。(ただし飲食の提供、食中毒の責任は補償しません。)

●ショップ/サービス施設に関する賠償責任保険

ダイビング事業者の管理する施設に関する賠償責任(施設賠償責任)、お客様から預かった器材等に関する賠償責任(保管物賠償責任)、お客様に販売した器材等に関する賠償責任(生産物賠償責任)がこのグループに属するものと考えます。
当然のこととして、組合では「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」の一部として含まれます。

「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」では、以上の3つの賠償責任保険を包括しているという意味で「総合」と称しています。しかし、これには以下の部分は含まれていません。保険制度上、以下のものをまとめてカバーすることは非常に困難です。組合で助言することはできますが、事業者は個別に加入・対応する必要があります。

●自動車に関する賠償責任保険(自動車保険)

ほとんどの事業者が自動車を業務に使用していると思います。

●ダイビングボートに関する賠償責任保険

多くの事業者がボートを業務に使用していると思います。

●宿泊施設・飲食提供に関する賠償責任保険

多くの事業者において該当するようになってきていると思います。

これらの説明についてはあとの各「チェックポイント」を参照してください。

 

事業者の保険とインストラクター保険の違い

組合の「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」では、組合員事業者が保険契約の主体、中心となっています。つまり、事業者が負う損害賠償責任を補償するのが第一の目的となっています。組合員事業者をプロテクトするための制度なわけです。もちろん、共同被保険者といって、その従業員が組合員の事業遂行に関して賠償責任を負った場合も補償します。しかし、それは「おまけ」で補償するようなものです。
それに対して、いわゆるインストラクター賠償責任保険は、インストラクターが保険契約の主体、中心となっています。つまり、インストラクター個人が負う損害賠償責任を補償するのが第一の目的となっています。もちろん、こちらの場合も、インストラクター個人の業務に関する行動によって、その雇用者・事業者が賠償責任を負った場合も負担することになっています。共同被保険者として、いわば「おまけ」として事業者も補償されることになります。
保険契約上、主たる被保険者と共同被保険者との間には、どっちにしてもカバーされるのだから、被保険者としての区別はないという考え方もあるようです。しかし、損害賠償の原因となる行為の主体は明らかに異なると言えます。

現在の日本においてはダイビングインストラクター、あるいはダイビングガイドは、専門的職業人、いわゆるプロフェッショナルとしての社会的立場を確立できているとはいえません。
ダイビングサービスの利用者・お客様としては、ダイビングショップやダイビングサービスといった事業者に申し込んだ、契約を結んだと考えるのが一般的です。特定のインストラクターとの間に契約を結ぶという認識は、現在の日本においてはまったくないはずです。したがって、この契約を履行する責任は、基本的に事業者にあるのであって、従業員であるインストラクターにあるのではありません。つまり「契約不履行」に伴なう損害賠償責任は「事業者」が負うことになります。これまで、契約不履行責任が次に述べる不法行為責任を上回る、あるいは固有の責任と考えた判決は出ていないようなので、問題になってこなかったということができます。しかし、本来は異なるものであるということができると思います。

もうひとつ「不法行為」による損害賠償責任というものが考えられます。これは、典型的には業務上過失致死といったような事件の場合に発生しますが、刑事事件として立件されなくても民事訴訟において認められる場合があります。この場合の行為の主体は従業員である場合が多いのですが、これについても「使用者責任」として雇用者の責任が一般的に追及されます。雇用者の業務に関して被用者・従業員が負った損害賠償責任は、雇用者が負担するというのが一般的であるということができます。
いずれにしても、組合が発足してからずっと主張してきていることは、ダイビング事業における損害賠償責任は事業者が正面を切って自ら引き受けるべきものであり、したがって賠償責任保険の契約主体にも事業者自らがなるべきであるということです。


自動車保険のチェックポイント

ここでいう自動車保険は、自賠責保険のことではありません。たしかに、自賠責は自動車賠償責任保険ではありますが、これは法律で強制的に加入が義務付けられているものです。つまり、入っていて当然のものであり、ここで議論するべきものではありません。
一般に、任意保険と呼ばれている自動車保険のことをここでは問題にしています。そして、対人対物の賠償責任を「無制限」で契約することを強くお勧めします。これは、自動車にお客様を乗せて運んでいる事業者にとっては、当然のことと考えていただきたいと思います。
また、もうひとつの重要なチェックポイントは、自動車を運転する者を必ず全部カバーするようにしてください。「家族限定」はもちろん、スタッフに若い者がいないからと「年齢制限」をするときには、絶対にその条件を厳守するようにしてください。たとえば、駐車場での、あるいは短い距離の移動だけだからと、年齢制限に達しないアルバイトやお客様にちょっと運転をお願いするといったことは、絶対にやってはいけないことです。
重ねていいますが、適切な自動車保険に加入していない自動車は、絶対使用しないでください。これはクルマ社会で、あるいはクルマ時代にそれを使ってビジネスをする者の鉄則だと考えてください。
「組合賠責」でも、インストラクター賠償責任保険でも、自動車に関する賠償責任についてはまったくの無力です。このことだけは忘れないでください。

 

ダイビングボート保険のチェックポイント

ここでは賠償責任保険のことをお話しています。したがって、ボートが壊れたときの修理をするための船体保険や、乗客のための傷害保険については第一のものとは考えません。
とにかく注意していただきたいことは、ダイビングボートに関する賠償責任は、「組合賠責」でも、インストラクター賠償責任保険でも絶対にカバーされないということです。
よく勘違いをしていることに、ボートが保険に入っていなくても、インストラクターが賠償責任保険に入っていたら、浮上の際の接触事故についてはインストラクター側の保険でカバーできると思っている人がいます。賠償責任は自分で決められるものではありません。ボート側の責任が認められた場合には、インストラクター側の賠償責任保険では対応できないことは当然のことです。
現在、組合で搭乗者に対する賠償責任負担がカバーされていることを確認している保険・補償制度は以下の6つだけです。他にも該当するものがあるのかもしれませんが、現時点では確認できていません。

  1. 組合のダイビングボート総合賠償責任補償制度
  2. NAUIのダイビングボート保険
  3. 漁船保険の新PI保険(漁船としての登録が必要)
  4. 遊漁船総合保険(遊漁船としての登録が必要)
  5. 船客傷害賠償責任保険(航路の認可が必要)
  6. 船舶保険で搭乗者に対する賠償責任負担担保特約のついたもの

ただし、この中の漁船保険のPI保険は、漂流事故については免責、つまりカバーできないとしていますので、その部分については不十分であると言えます。
一般に、「ヨット・モーターボート総合保険」と呼ばれているものでは、搭乗者、つまりボートに乗っている人に対する賠償責任は一般の保険会社は補償しないことになっています。このことを支払い責任を免れるということで、「免責」と保険では言います。このような大きな免責内容が含まれていては、何のために保険に加入するかわかりません。ですから、この種の保険では不十分です。
また、細かいことをいいますと、「搭乗者」という定義が、実は未確定のまま現在に至っているという事情があります。自分のボートからエントリーしたダイバーは搭乗者と考えるべきかどうかという問題があります。もし搭乗者ではないとするならば、通常の落水者、つまりボートから落ちた人も、飛び込んだのだとすれば搭乗者でないことになり、その人に対する賠償責任は免責ではないことになります。いずれにしても、確実に搭乗者に対する賠償責任も補償される保険に加入することが必要だと思います。

 

宿泊施設・飲食提供等の賠償責任保険のチェックポイント

ダイビングショップのための賠償責任保険は、通常のダイビングショップの営業にかかわるものしかカバーしないのが一般的です。組合の「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」でも、その他の責任については補償できません。
しかし、特にリゾートのダイビングサービスにおいては、宿泊施設を併設し、あるいは昼食・お弁当を提供する事業者も多くあると思います。また、リゾートマンションやペンションを借り切って利用しているいわゆる都市型ショップの事業者も散見されます。この場合、サービス提供のパターンによってどの程度の自覚があるかわかりませんが、事業として宿泊や飲食を提供しているのだということをはっきり認識する必要があると思います。もちろん保健所や消防署等への届け出も必要ですが、もっと根本的にお客様(利用者)に対する責任があるということをまず自覚する必要があります。
賠償責任保険は、本来、そんなに高い保険ではありません。ダイビング事業に関しては売上の5%程度、少なくとも3%には達しますが、宿泊施設や飲食提供の場合には、相当の売上の1%に満たない額で加入できるのが一般的です。
宿泊施設や飲食の提供を行なっている事業者は、必ずそれに対応する賠償責任保険への加入を行なってください。

シーカヤックを始めたんだけど・・・どこまでが補償の範囲か

組合では組合員事業者の複合的な、あるいは多角的な事業の取り組みを推奨しています。しかし、あくまでもダイビング事業者のための保険ですので、何でもかんでも補償の対象とすることはできません。ダイビング事業者が主催して然るべき催事・イベント、あるいはそれに付帯して発生する事業が「組合総合賠償責任補償制度(組合賠責)」の補償範囲となります。
具体的には、ダイビングに関するガイドサービスの間に、シーカヤックも教えている、といった場合には、補償の範囲と考えます。ホエールウオッチングも、ドルフィンスイミングも、自然観察会も含まれると考えられます。ただし、それらを独立した事業で、別の看板を掲げて行なう場合には補償の対象となりません。この境界については微妙な問題があるので、疑問な点は必ず事前に相談してください。
ダイバーである固定客を対象として親睦を深める活動も、ダイビング事業者が主催して然るべき催事・イベントと考えられます。このように表現すると何のことを言ってるのかわかりにくいと思います。しかし、いわゆる都市のダイビングショップが行なっているスキーツアーや、温泉旅行(本当にそんな呼び方するのかな)、バーベキューパーティー等のことだといえば、わかってもらえるでしょう。この場合、固定客以外の不特定のお客様を連れて行くスキーツアー等は、「組合賠責」の補償の対象とはなりません。また、危険度の高いスポーツ(山岳登攀や熱気球、ハングライダー等)についても補償の対象とはなりません。
ダイバーのためのベビーシッターも、当然の派生的な業務と考えます。ご両親に安心してダイビングを楽しんでいただくためには、これからのダイビングサービスにおいては、当然のこととして必要な機能と考えられるからです。もちろん、ダイビング事業とは関係なく、ショップで別途託児所を経営するといった場合には、「組合賠責」の補償の対象とならないのは当然のことです。
ただし、注意していただきたいことですが、組合賠責の場合でも、ダイビング以外のサービス、活動をする場合には、必ず事前に組合までその旨を相談し、届け出るようにしてください。事前に通知がなく、勝手にシーカヤックをやっていて、あるいは乳幼児を預かっていて事故が起こったとしても、組合では対処できない場合があります。